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hinohi_no
2025-04-29 20:28:40
6856文字
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九龍城砦
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愛のかけら/九龍城砦
秋兄貴の話。モブと洛軍と信一が出ます。この先の生き方について。
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ずいぶん歳をとっているはずなのに、他の大地主とは違ってキビキビとした立ち姿。かつて九龍城砦の抗争の全面に立っていた男。けれど今は犬用の牢獄の中である
――
白髪の老人に餌のように飯をやり続け、幾分も経つ。
最初の頃は皆で面白がって牢屋を蹴ったり転がしたり叩いたりしたのだが、泣きも喚きもしないものだからすぐに飽きてしまった。
それで、一人また一人とかつて龍捲風の棲家だった理髪店から離れ、麻薬を詰める作業に移る中で、「おい、全員消えたらこいつどうすんだよ」と言ってしまったのが運の尽きだ。
じゃあお前がやれ、と言われてしまって、仕方ないので一日に一回は顔を出さなきゃいけなくなった。
適当に餌をやり、水をやり、それから散歩に連れ出してやる。比喩だ。
小綺麗だった見なりはあっという間に薄汚れていくけれど、路地裏のこの世の終わりみたいな生き物とは違う。こっちが暇な時に話しかけてもうんともすんとも言いやがらない。義兄弟を殺しておいて、まるでとても悲しいことのような顔をしていた。
虚な瞳はどこも見ていないけれど、思索の中、時折涙が溢れている。与えている水分のほとんどを、目から流してしまってるんじゃないか。泣いていることにも気づいていないのか。そろそろ限界かなと思うけれど、いつまで経っても一筆書いてくれやしない。
こんな場所に閉じ込められて、自分だったらとっくに根を上げている。九龍城砦の取り壊し補償金も大事だが、命の方が大事だろう。
元々えらい金持ちらしいし、金なんかどうでもいいはずだ。解放されればまたあの凜とした姿が見られるのだと声をかけてもやっぱり無駄。
とことん惨めな姿なのに、何をやっても屈さない。それだけで、なぜかこんな老人を、うつくしいと思い始めている自分もいやだ。きっともう正気を失っているんだ、そうなんだと言い聞かせて。
きっとすぐに根をあげる。もう今すぐに出してくれと叫び出す。そんな日が来るわけないと分かりつつも、今日も俺は餌をくれてやる。死ぬその瞬間まで抵抗し続ける姿を
――
目に焼き付けたいと思いながら。
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