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hinohi_no
2023-07-28 22:55:14
7779文字
Public
インド映画
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あなたの中に神を見る/RRR
絆と愛はあります。アールの小話。
1
2
3
Rise
アクタルとラーマ・ラージュのふたりは、実のところ有名人である。
ニューバザールは多くの店や人が行き交う場所であり、インド人以外が訪れることも少なくない。人、人、人に埋め尽くされる中で、話したこともない誰かを認知することは、普通ない。
普通はないが、アクタルとラーマ・ラージュが普通じゃないことなど、この一帯の人間にとっては周知の事実なのである。
もちろん己だって、最初から彼らを知っていたわけじゃない。例えばラーマ・ラージュであれば、道ゆく中で見かけた折に、随分美しい男だと思うことはあるかもしれないが、それだけだ。
あの、列車事故の時。
誰も子供の救出はできなかった。油に塗れた川を泳いではいけない。船もない。炎にいつ巻かれるかも分からない。祭りの場所と近かったこともあり、その子供のいく末を眺めていた人間は何百人もいた。
そして、一人残らず何もできなかった。
……
その時に何があったかは、口で説明することは難しいのだが、兎に角、橋の上の男ラーマ・ラージュと、橋の下のアクタルによって子供は助かった。誰だって子供が死ぬのは見たくない。二人の顔は、あの場にいる皆が覚えている。遠巻きながら見ていても、それでも彼らであることは記憶した。
そんな英雄であるアクタルとラーマ・ラージュを
――
働いているニューバザールで見かけて、物凄く驚いたのは結構前の話だ。
今まで何故見かけなかったのかと思うほど、二人はよく一緒にいた。
笑い合って、隣を歩いているのを見かけると、全く己と関係がないのに今日もいいものを見たな、と言う気持ちになる。別に彼らとて毎日一緒にいるわけじゃないけど、共に過ごす時間をかけがえのないもののように笑い合っている姿。
イギリスの支配への抵抗が高まる一方で、インド人への当たりは強くなり、人間扱いされない瞬間がある。誰しもが抵抗運動に本気なわけじゃない。誰しもが独立に本気なわけじゃない。それでも、誇りを粉々にされる時間があって、そう言うことばかりだった
――
そんな時に。
これが我らが誇るインドの姿なのだと思えるような、彼らがいるなら踏ん張っていけるような、あんな奇跡を起こせるなら何かができるんじゃないかと思えるような
――
二人の姿に。
「今日もあの二人、仲がいいなあ」
「この前、ラーマの方がお菓子を買いに来て、弟分が食べ過ぎるんだって言ってたよ」
「アクタルが嬉しそうに鶏肉を買いに来てたのは、人を招待するんだと。まあ、ラーマなんだろうな
……
」
「知ってるか? あの二人、あれが初対面だったらしい」
「いくら何でもそれは、嘘じゃ
……
?」
二人の話をすれば、ニューバザールの大半の人々は楽しそうに口を開いていた。
だから。
だから、アクタルが鎖に繋がれて、そのアクタルを鞭打つラーマを見た瞬間に、我々は言葉すら失って、見ていた。
アクタルの歌を。
ラーマの残酷な仕打ちを。
そして、湧き上がる、この激情を
――
誇りの感情を、あの時とは全く違う状況でも呼び起こされて。
それでも、何が二人の間にあったのか、そんなことは分からなかったけれど
――
あの日、あの時のしっかりとその手を握り合った彼らを知る、全ての人は。
どうか、彼らが仲直りできるよう祈ったのだから。
いつか、また、笑い合い、その手を力強く繋ぎ合う、彼らが見られますようにと。
了
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