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hinohi_no
2023-07-28 22:55:14
7779文字
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インド映画
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あなたの中に神を見る/RRR
絆と愛はあります。アールの小話。
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3
きみたちの行動の結果
銃の入った箱を全てトラックに積んで、さめざめとした太陽の下で、ビームは一息ついた。これで全てだ。ありったけの残っているものまでかき集めて、ラーマが使命とした武器はここにある。
「兄貴」
兄の最愛の人、シータが。そしてビームの仲間たちと、もう一つの家族である親方たちが待っている。ジェニーも、そうだろう。さぞや心配しているはずだから、早く行こうと首で合図する。ふわふわと柔らかな髪を靡かせるラーマは、この数ヶ月の獄中生活で傷めた体も何もかも、今は神威に被せて平気そうだ。ビームの薬草も少しは効いていれば、それはとても嬉しいことだ。
「ビーム」何百回も呼ばれたその低くて耳障りのいい声に、どうした、と振り返れば、兄貴が手を差し出していた。
一度目は、運命のように。
二度目は、裏切りと共に。
三度目は、全ての信頼を預けきって。
そして四度目の今は、なんだろうか。なんだって良かった。ラーマがそれを望むなら、ビームに断る理由なんてない。手を重ねて、その瞬間
――
その体に、抱き寄せられた。
ビーム、と自身の名を呼ぶ声が震えていることに、たった今気がついた。
ラーマ、と名前を呼んだ。ラーマがビームを抱きしめる手により力が入って、ぎゅうぎゅうと、力強く、抱きしめられて。息ができないくらいの強さで。息も忘れるほどの献身で、親友が口を開く。絞り出すように、希うように。
「君に出会えて
――
良かった」
「
……
そ、んなのは」
そんなのは、コムラム・ビームの言葉だった。あの日、あの時、橋の上の彼を見つけた瞬間から、ビームにとっての指針だった。親友だった。兄弟だった。どうしてと何度も問うて、何故なのかと何度も自問した。答えはなかった。いいや
――
ここに、答えなど、等にあったのだ。
「俺もだよ、兄貴。兄貴に出会えて、良かった」
抱きしめ返す手は加減なんてできない。渾身の力でその体を抱きしめる。
「ビーム、ビーム
……
すまない、私は
……
君を一度、絞首台に送ろうとした」
それが祖国のために払うべき犠牲だと、一旦は飲み込んで
――
それなのに、覚悟は決めたはずなのに、何度も心がちぎれそうになった。痛みで人が死ぬのなら、この胸を抱えて生きている己はなんなのだろうと思った。君を裁く鞭は全て自身の痛みだった。生まれて初めての、親友を。この世で一番愛おしい兄弟を。己は確かに、処刑を覚悟で捕らえたのだ。言い訳などできるはずもない。
「なんだ、そんなことお互い様だ。兄貴、俺こそ、本当にすまない」
兄貴は親友だ、と抱きしめる腕の中、ビームは笑う。あの日も笑った。鞭に打たれ、皮膚を裂かれ、血を流しながら、ビームは笑った。この世の誰よりも、支配できない虎は、大地女神の子として笑ったのだ。
使命に生きてきた。この使命を果たすことが、自らの定めだと信じてきた。犠牲になった人。もういない家族。これまでの血溜まりの上を歩んできたラーマにとっては、その使命こそ全てだった。
使命に走ってきた。幼い少女を連れ去って、母親を殴りつけ、人を人とも思わぬ所業を許そうとは思わない。必ずマッリを連れ戻す、そのためにあらゆる辛苦に耐えることを誓って。
けれど、出会ったのは友情で。
その友情がなければ、我々はここに至ることなど、なかったのだから。
この手が、君の命を奪ってしまわなくて良かった。
この手が、君の命を救うことができて良かった。
ビームがいなければ。
ラーマは特別捜査官にはきっとずっとなれなかった。毒蛇に噛まれて死んでいた。武器を手に入れていた。武器のない革命を知らなかった。独房に繋がれることはなかった。武器を手に入れることはなかった。
ラーマがいなければ。
ビームはジェニーと親しくなれなかった。スコット邸でマッリを取り返していた。独房に繋がれることはなかった。ヤムナー川を待たず処刑されていた。マッリを取り返すことはできなかった。
そして何よりも、二人が出会うことはなかった。
互いの体にめり込むほど抱きしめうから、息ができないと、ビームが僅かに笑う。それもそうだ、とラーマは目を細めた。ずっと互いに隠しているものがあって、固く手を握り合っても、抱きしめることはなかった。今は思う。ナートゥのリズムよりも力強い、互いの鼓動。どちらかが欠けてはいけないのだと、互いの左胸の心の臓が叫んでいる。君に出会えて良かった。君だから、良かった。
森の大地の子の香りがする、と笑えば、ビームは一度瞬いた。
「兄貴
……
人の香りをあまり評しない方が
……
」
「いいから頷け!」
弟を倒れるように抱きしめて、そのまま大地にビームと転がった。共にいたたくさんの時間。宝物の日々。失うことを覚悟した時間は、ここから新たに始まるのだろうと。兄貴の勝ちだなあ、と笑ったビームは立ち上がって、座ったままのラーマに手を伸ばす。
あの日のラーマのように。
「一緒に帰ろう」
それが全てだった。
了
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