hinohi_no
2017-03-21 21:47:13
583文字
Public トム関係
 

星の男

少女とイーサン・ハント

ふと物音がして覗いてみたら窓から見下げた路地裏に、拳銃を持った男がいた。普通だったら、そんなやつがいたら慌てて窓を閉めるのに、できなかった。なにしろ、彼は、まるで映画の俳優のようにうつくしい顔立ちをしていたのだ。その上、野蛮であったり、危険な存在からは感じられないような優しい微笑みを浮かべ人差し指を、魅惑的なつやのある唇にあてがった。
は、と息を飲む瞬間、外から「やつはどこだ! 探せ!」という怒号が響く。彼を慌てて見ると、やわらかな目尻をまたたかせて、唇からわずかな音を漏らした。
――shii.
途端、ドアが無理やり開かれ、弾かれたように向き直る。今にも人を殺しそうなやつらが、「男を見なかったか!」とまくし立てる。ぶんぶんと青い顔で首をふると、舌打ちとともに出て行く。
そろり、下を見る。彼がぱちりとウインクした。星が瞬く、その瞳。
「僕のことを黙っていてくれて、ありがとう」
その一言だけで、危険を犯して嘘をついたすべてが報われる。そもそも、こんなうつくしい人、見たことすらなかったのだから。もしかして、天使さまなのかもしれない。「それじゃあ、マドモアゼル。早く寝るんだよ」友だちであるクマのぬいぐるみを抱えてこくこく頷いた。彼が路地裏の闇夜にまるで黒猫のように溶け込んでいくのを見届けて、星空を見上げる。
まるでお星さまだわ、と、少女はつぶやいた。