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hinohi_no
2017-01-03 16:43:36
2743文字
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他洋画・洋ドラ
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没
ニュートの無頓着さ
「うつくしいだろう?」
碧く発光する鱗をたたえた蛇のような竜のような生き物に手を伸ばして、ニュート・スキャマンダーはそう言った。そう問いかけるニュート・スキャマンダーこそがうつくしいのだと喉元まで出かかった言葉を飲み込んだのには、わけがある。
彼がそう言ったのは、クリーデンスの目の前で、今まさに、あんぐりと大きく開かれた口に飲み込まれそうになりながら、である。
「み、ミスタ
……
ッ!」
「綺麗だ。この牙、
……
多分毒があるな」
当然のようにかぶりつかれようとしながら、杖を口に咥えて大きな牙を撫でるさまに、流石の魔法動物も一瞬きょとんとして動きを止めた。ああ、良かった。いや、良くない。お願いだからその人を食べないで。そのまま口を閉じたら、ニュート・スキャマンダーは腕一本、失うのだ! と、言うか、死ぬかもしれない!
だというのに、心配もよそに彼は魔法動物を撫でながら、牙の数や、鱗の質を調べている。思い出したように魔法動物が攻撃しようとしたら、姿くらましで避けたり、姿くらましすら使わずにおっと、なんて言って。
「あ、危な
……
!」
はらはらしながらつい口に出すと、彼は大丈夫大丈夫と言いながら、あ、でもごめんよ、と謝った。
「は
……
?」唐突すぎて、なんで謝られたのかさっぱり分からない。むしろ謝るならば、今すぐ魔法動物から離れてほしい。
「真っすぐイギリスに行くはずだったのに、寄り道してしまって」
「そ、それはいいですから」
アメリカからイギリスまでの距離は遠く、船を乗り継いでも時間はかかった。その間も、彼は魔法動物の噂を聞きつければ当然そちらに向かったし、ややルートは遠回りをしながらも、目的地だけは変わらないからいいのだ。そこのところは全く気にしていない。ただ、クリーデンスが彼に振り回されながら一緒にいる中で知ったことがある。
ニュート・スキャマンダーは、己の怪我に驚くほど頓着しない。
クリーデンスに対しては、どこから出てくるのかさっぱり分からない防具をコートから引っ張り出して(あのコートもトランクのように魔法空間になっているのかもしれないと、クリーデンスは疑っている)、怪我をしたら危ないから、と言って渡すのに、己は全く身に着けないのだ。治癒魔法は万全じゃないし、僕はそれほど治癒魔法がうまいわけではないからね、と言ってのけるのはいいのだ。誰しも得手不得手はある。杖も使わずに己の傷を治していた彼については
――
(君は知らないかもしれないから、伝えておくけれど)
そう前置きして彼が告げたのは、パーシバル・グレイブスはその本人ではなかったということだ。
己を最初に見つけてくれたあの人が、グリンデルバルトという闇の魔法使いであったのか、それともアメリカ合衆国魔法議会長官、パーシバル・グレイブスだったのか分からない。
……
きっと分からないままなのだろう。本人は今も、行方不明のままなのだから。生存は絶望的。グリンデルバルトは変身術の達人であり、そんな男が強力な魔法使いであるグレイブスを殺さないメリットや理由はどこにもなかった。だから、彼は死んでいる確率が高いのだろう。答えはない。己のことを徹頭徹尾利用していたのは、グリンデルバルトだったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。グリンデルバルトは尋問には一切応じないと言う。そうしてこれほど離れてしまえば、マクーザに所属しているわけではないニュートには、それ以上の追加情報は得られるはずもなかった。いつかは分かるのかもしれない。グリンデルバルトが真実を話す可能性はある。クリーデンスにはよくは分からなかったけれど、真実を吐露させる魔法も薬もたいして効かないらしくて、だから己は答えの出ないものを、持ち続けている。でも、分かっていることは。
あの怪我を癒してくれたのは、彼だったということ。
そうしてあれほど巧みに治すことができたのは、グリンデルバルトが、最も強力な魔法使いだったからということ。
……
ニュート・スキャマンダーは治癒魔法の専門家でもなければ、最も強力な魔法使いでもない。魔法動物学者なのだ。その身体に、あらゆる場所に、動物の爪痕も牙の痕ものこっていると自身でも言っていた。だというのに。
「君、怪我をしているのかい?」
そう言いながら患部に触れようとして、予備動作もなく魔法動物のつばさが、動いた。
「いっ
……
!」
手を咄嗟に引っ込めた彼に、呼吸がとまる。引っ込めて抑えたまま、けれどもニュート・スキャマンダーは視線を魔法動物の怪我からそらさずに、「ああ、これなら
……
自然治癒で大丈夫か」と呟いた。それからこちらを向いて、ちょっと困ったように笑ってから、魔法動物に背を向けないままで戻ってくる。
「あまり敵意がないみたいで、珍しい子だ」
そう言いながらトランクを開けて自然にコツコツと階段を降りて行った。
「
…………
いや」
何を当たり前のように明らかな怪我をスルーしているのか、と思った瞬間、魔法動物がキュアアアアアアンと鳴いて、翼を広げた。「へ?」ばさり、ばさりと羽を動かすたびに身体が浮いて、何故か、こちらを見据えている。なんだか酷くまずい気がして目が離せないでいると、案の定魔法動物は地面を蹴って、こちらに飛んできた。
「うわあ
……
!?」
一度座り込んで、かぎ爪のような脚から逃れたが、彼から貰ったコートに爪痕が付いている。ばさり、と方向転換をする前に、僕は慌ててトランクの中に飛び込んだ。慌てすぎて階段を降りることもできず、何段か飛ばして、しりもちをつきながら。
「い、いたた
……
み、ミスター
……
」
地面に手をついて起き上がると、彼は手のひらから肘にかけてまですっぱり切れた怪我を露出させながら、落ちてきたクリーデンスを吃驚して見ていた。
「あ、あれ、大丈夫? クリーデンス?」
ぱたり、と落ちる血液は傷が浅くないことを示していて、クリーデンスは痛む身体のことも忘れて慌てて起き上がって彼の手をとった。肘までの傷口のために、溢れる血が彼のシャツを汚している。あ、と彼はそれを見てシャツを脱いで、自分で薬草を塗り始めた。
その、身体のいたる箇所の傷痕に、目を見開く。
胸、肩、背中、脇腹、二の腕、あらゆる箇所に爪痕と噛まれた痕が、散らばっていた。
傷を負った場所だけが再生の為に皮膚が盛り上がっているさまや、赤く残っている様子は、とても普通の生活ではつかない
――
魔法動物との触れ合いによってついたことは明白であった。これまでも、手の甲に見える痕や、鼻の頭の傷痕から、怪我が多いのだろうと思ってはいたけれど、そんな想像をはるかに超えていた。
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