スカヴを、なんのためらないもなく、それが正義と信じ、地球のためだとおもい、消してきたジャック・ハーパーは、そのひとつひとつに家族がいて、歩んできた軌跡があることを知って、たしかに、絶望した。だからこそ、ああなることは必然だった。その行動は英雄と言えるだろう。彼のおかげで、地球は救われたのだ。人類は。
だけど。
それでも、恨まずにいられるだろうか。果たして彼に罪は、ないと? 頭では分かっていても、納得は難しかった。けれど、あの、ヒーローが、ヒーローとして帰ってくる。その帰還を、くやしくて憎んでて呪ってても祝福してしまうだろうし、ヒーローがヒーローとして死んだとき、われわれは彼を想い泣くのだ。悔しいけれど、あんたを呪うし、憎むけれど、心からおもう。
おかえりなさい、マイヒーロー。
そして、さようなら。ジャック・ハーパー。
あんたのことを、誰もが忘れない。いい意味でも、悪い意味でも、あんたはこの星の、人々の、特別、だった。救った数より、殺した数の方が多いであろう、ジャック・ハーパーを、それでも愛するだろう。われわれは、彼を、心から憎むことがきっとできないのだ。
<font size=5>ジャック・ハーパーという、希望と絶望</font>
巨大な力もないし、一捻りで死んでしまうようないのちだ。レーザーだって出せないし、都合のいいことばかり見る悪癖だってある。それでも守りたいものがあって、救いたい命があって、そのためなら己の命だって投げ出せる、そんな人間が、うつくしいことを、知っている。
49号、つけられたナンバー、寸分たがわぬ己、たくさんの自分、たったひとりの、愛するひと、彼女と出会えた奇跡を。本物でなくてごめんなさい。ただのクローンですまないと思う。
それでも君を愛してる。
どうしようもなく、愛しいと思う。ジャック・ハーパーの根幹は、君なんだ。だから、つづくほかの僕だって、君のもとにたどり着くだろう。いろいろなことをみて、さまざまなことを考えて、僕と同じように、本などをひろって、見知って、聞いて、そしてこの気持ちを、愛と知るだろう。僕はここで消えるけど、君が息づく地球を守れる。奪ったいのちはかえせない。僕の手はけがれきっている。憎まれるのは当然で。そんな罪びとでも。利用された、偽物でも。……君が笑う。生きている。その、地球を、守って死ねる。ああ。僕なんかでも。
ヒーローだって、なれるんだ。それが嬉しいと、確かに、思った。
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